手玉が短クッション寄りにあると、セブンシステムでは数値が出せません。かといってヒネリを使うシステムだと出過ぎてしまう。そういう場面で使えるのが、ノーイングリッシュのタテ箱システムです。
撞点はセンター、計算は引き算ひとつ。使える範囲は限られますが、はまる配置では確実に狙いが立ちます。
逆サイドから撞く場合は、数値の並びがそのまま左右反転します。
どんなときに使うシステムか
このシステムの立ち位置は、はっきりしています。ほかのシステムが使えない場面の受け皿です。
セブンシステムが使えないとき
セブンシステムは、手玉が短クッション側にあると計算できません。数値を読み取る前提から外れてしまうためです。タテ箱システムは、まさにその配置を計算できるように数値が組まれています。
ヒネリのシステムで出過ぎるとき
ヒネリを効かせるシステムは、球が伸びます。狙った第3クッションを通り越してしまう配置では、ノーイングリッシュのこのシステムに切り替えると収まります。
- 手玉が短クッション側にあり、セブンシステムでは数値が出せない
- ヒネリのシステムだと出過ぎてしまう
球の通り道と「タテ箱」の名前
先に経路を押さえておくと、数値の意味が分かりやすくなります。
- 手玉は手前の短クッション寄りにある
- 台を縦に横切って向かい側の短クッションへ入る(=第1クッション)
- そこから長クッションへ(=第2クッション)
- 戻ってきて手前の短クッションに入る(=第3クッション)
台の長辺方向に往復するので、軌道が縦長の箱のような形になります。これが「タテ箱」の名前の由来です。手玉のいる短クッションと第3クッションが同じ辺になるのが、このシステムの特徴です。
撞点はノーイングリッシュ
名前のとおり、ヒネリは入れません。撞点は縦横ともに中心、つまりセンターです。
システムの数値は「決めた撞き方をしたときにここへ来る」という前提で組まれています。ヒネリを足せばその前提から外れ、数値どおりには行きません。ここを崩さないことが、このシステムを使ううえでいちばん大事な約束です。
数値の振り方
使う数値は3種類です。CUE(手玉)、3rd(第3クッション)、1st(第1クッション)。
| スケール | 振る場所 | 数値 | 1ダイヤあたり |
|---|---|---|---|
| CUE (手玉) | 手前の短クッション | 0 / 5 / 10 / 15 / 20 | 5 |
| 3rd (第3クッション) | 手前の短クッション | 0 / 7.5 / 15 / 22.5 | 7.5 |
| 1st (第1クッション) | 向かい側の短クッション | 0 / 10 / 20 | 10 |
ポイントは、CUE と 3rd が同じ辺を別々の刻みで読んでいることです。手前の短クッションの同じ場所を指していても、手玉として読むなら 5 刻み、第3クッションとして読むなら 7.5 刻みになります。どちらのスケールを見ているのか混同しないでください。
3つのスケールに共通すること
どのスケールも、0 は同じ側の角から始まり、そこから離れるほど数字が大きくなります。逆サイドから撞くときは、数値の並びがそのまま左右反転します。図の上下2枚が、ちょうどその関係です。
計算方法
やることは引き算ひとつです。
1st = CUE − 3rd
手玉の位置の数値から、通したい第3クッションの数値を引く。残った数が、狙うべき第1クッションの数値です。第3クッションを目標にして、そこから逆算するのがこのシステムの考え方です。
例1:CUE 20 から 3rd 15 を狙う(上図)
20 − 15 = 5
手玉は 20、つまり手前の短クッションで 0 から最も遠い角の側にあります。ここから第3クッションの 15 に入れたい。差は 5 なので、向かい側の短クッションの 5 に向けて撞きます。0 と 10 のちょうど真ん中、ダイヤ半個分の位置です。
例2:CUE 15 から 3rd 7.5 を狙う(下図)
15 − 7.5 = 7.5
手玉が 15、第3クッションが 7.5。差の 7.5 が第1クッションの数値です。3rd のスケールは 7.5 刻みなので、答えにも 7.5 のような半端な数が出てきます。1st は 10 刻みなので、7.5 は 0 と 10 の間を 4 分の 3 まで進んだあたりということになります。
刻みが違うことの意味
CUE が 5 刻み、3rd が 7.5 刻み、1st が 10 刻み。数字の大きさが揃っていないので、慣れないうちは「どのスケールの 15 か」で混乱します。読み取るときは必ず、いま自分がどの辺のどのスケールを見ているのかを声に出して確認するくらいでちょうどいいです。
使うときの注意
2つの落とし穴
- 使える範囲が限られる。どんな配置でも使えるシステムではありません。数値が読み取れない配置では、無理に当てはめないこと。
- 強く撞きすぎると立ち気味になる。力加減が上がると球の角度が起きてしまい、計算どおりの経路を通りません。
とくに2つ目は、システムを覚えたてのころにやりがちです。数値が合わないとき、多くの場合は式ではなく撞き方のほうがずれています。まず「ノーイングリッシュ・一定の強さ」を守れているか確かめてください。
まとめ
- 手玉が短クッション側でセブンシステムが使えないとき、ヒネリで出過ぎるときの受け皿
- 撞点はセンター(ノーイングリッシュ)
- 手前の短クッション → 向かい側の短クッション → 長クッション → 手前の短クッション、と縦長の箱を描く
- 計算は 1st = CUE − 3rd の引き算ひとつ
- CUE は 5 刻み、3rd は 7.5 刻み、1st は 10 刻み。0 はすべて同じ側の角
- 使える範囲は限られる。強く撞くと立ち気味になる
数値の感覚をつかむには、実際に球を動かしてみるのがいちばんです。物理シミュレーションで配置を作り、計算どおりの経路を通るか確かめてみてください。
システムの考え方(解説ページ) 数値が合う前提と、ほかのシステムとの関係