スリークッションは、ポケットのない台で3個の球を使うキャロムビリヤードの一種目です。手玉を撞いて、クッションに3回以上当ててから2個目の的玉に当てると1点になります。この「3クッション以上」という条件が種目名の由来です。
覚えることは、実はそれほど多くありません。2個の的玉の両方に当てること、2個目に当たるまでにクッションへ3回以上入れること。この2つがそろえば1点です。あとは並べ方と交代のしかたが分かれば、その日から1ゲーム遊べます。
使う道具
スリークッションはキャロムビリヤード専用の道具で遊びます。ポケットビリヤードとは台も球も別物なので、まずはそこから見ていきます。
台
ポケットのない長方形の台を使います。日本ビリヤード協会の競技規定では、クッションの内側の寸法で大台が2845×1422mm、中台が2540×1270mmと決められています。国際大会で使われるのは大台ですが、街の球場に置かれているのは中台のことも多く、はじめは中台でまったく問題ありません。同じ球筋でも大台のほうが距離が伸びるぶん、力加減はやや強めになります。
床から台の面までの高さは750〜800mm、クッションの高さは36〜38mm。公式戦の台にはヒーターが入っていて、石板とラシャの湿気を飛ばし、球の転がりを一定に保っています。ヒーターの有無で球足はかなり変わるので、行きつけの台の癖を覚えておくと狙いが安定します。
クッションの外側の枠には、狙いの目安になる印(ダイヤ)が並んでいます。長いほうの辺は8等分、短いほうの辺は4等分の間隔で、長クッションに7個、短クッションに3個ずつ入っています。この目盛りに数値を割り当てて狙いを組み立てるのがシステムで、スリークッションの中心にある考え方です。
球
白・黄・赤の3個を使います。白と黄がそれぞれのプレーヤーの手玉で、赤は共通の的玉です。自分の手玉以外の2個が的玉になります。
規格は直径61〜61.5mm、重さ205〜220gで、1セット内の重量差は2g以内と決められています。ポケットビリヤードの球(直径57.15mm)より一回り大きく重いので、同じ力で撞いても走り方がまるで違います。持ち上げてみると、その差はすぐ分かります。
キューとチョーク
競技規定でキューに求められているのは「先端に皮製のタップが付いていること」だけで、重さや長さ、1試合で使う本数に制限はありません。とはいえ実際には、スリークッション用として作られたキューが使われます。タップが細め(11mm前後)で先端が軽く、重い球をひねって走らせやすいのが特徴です。
ひねりを多く使う種目なので、チョークは1ショットごとに塗るのが基本です。手が届かない配置では、ハネ(メカニカルブリッジ)などの補助器具も使えます。キューやタップの具体的な選び方は機材紹介の記事で扱います。
得点の数え方
手玉が、3回以上クッションに当たったうえで2個目の的玉に当たれば1点です。順番は問わないため、先に1個目の的玉に当ててからクッションに当てても、先にクッションに当ててから的玉に当ててもかまいません。
- 手玉が2個の的玉の両方に当たること
- 2個目の的玉に当たる前に、クッションに3回以上当たっていること
得点すればもう1度撞けます。外れたら交代です。1点は1点で、難しい球を決めても加点はありません。
当てる順番は自由
条件さえ満たしていれば、どんな回り方でも1点です。代表的な形を2つ挙げます。
クッションの数え方
「3クッション」は回数のことで、3面のクッションに当てる必要はありません。同じクッションでも、いったん離れてからもう1度当たれば、別の1回として数えます。長クッション2回・短クッション1回でも、条件は満たしています。
- コーナー:入り込んで2本のクッションに触れたら、2回として数えます。
- 同じクッションを続けて擦る:クッション際を舐めるように走り、離れないまま何度も触れている場合は1回です。
- 手玉が触れているクッション:その状態のまま当たっても回数には入りません。いったん離れて戻ってくれば数えます。なお、密着しているクッションに向かって撞くこと自体が反則です。
審判がいない場面では、判定に迷うこともあります。競技規定では、判断が難しい事項は撞いたプレーヤーに不利なほうへ裁定するのが原則とされています。クッションの回数が微妙なときは、入っていない扱いにするのが約束です。
ゲームの進め方
得点すればそのまま続けて撞くことができ、外れたら相手と交代します。連続得点はハイランと呼ばれます。決められた点数に先に到達したほうが勝ちです。
先攻を決める(バンキング)
2人が同時に、手前の短クッションから向こうの短クッションへ手玉を撞きます。戻ってきて手前の短クッションにより近い位置で止まったほうが勝ちで、先攻・後攻の選択権を得ます。止まった位置が同じくらいなら、やり直しです。
次の場合は、その時点で負けになります。
- 手玉が台の中央を越えて相手側に入った
- 手玉が赤に当たった
- 手玉が一往復半以上走った
- 手玉が短クッションより先に長クッションに触れた
ブレイクショット(初球)
先攻は白、後攻は黄を手玉にします。球は決められたスポットに置き、先攻の1球目だけは赤に直接当てなければならないという決まりがあります。空クッションから入ったり、先に相手の手玉に当てたりすると反則です。
交代とイニング
得点できなかったとき、または反則をしたときに交代です。反則をしても、球は止まった位置のまま次のプレーヤーが撞きます(台から飛び出した球など、置き直す場合は後述します)。
先攻・後攻の両方が1回ずつ撞き終わると、1イニングです。イニング数は、得点と並んで実力を示す数字になります。得点をイニング数で割った値がアベレージで、この種目でいちばんよく使われる物差しです。
勝敗の決め方
あらかじめ決めた点数に先に到達したほうが勝ちです。大会では、次の2つの形式が使われます。
| 形式 | 決め方 |
|---|---|
| リーグ(総当たり) | 原則として同数イニングで行います。先攻が先に到達したら、後攻にも1イニングが与えられ、そこで追いつけば引き分け、届かなければ負けです。 |
| トーナメント(勝ち抜き) | 先攻・後攻に関係なく、先に規定点へ到達したほうが勝ちです。同数イニングの調整はありません。 |
リーグ戦で勝ち点が並んだときは、グランドアベレージ(総得点÷総イニング)、総得点、ハイラン……という順で順位を決めます。1試合の中の1イニングでの最高得点がハイランです。
持ち点とハンデ
球場での普段のゲームは、実力に合わせた持ち点で行うのが一般的です。同じ点数で競うと差が出すぎるため、上級者は多め、始めたばかりの人は少なめに設定して、先に自分の持ち点へ到達したほうが勝ちとします。
初めて遊ぶなら、10〜15点あたりが手ごろです。あわせて「30イニングまで」のように上限を決めておくと、終わりが読めて気楽に遊べます。
- 始めたばかり:0.1〜0.2(10回撞いて1〜2点)
- 球場の常連:0.4〜0.6
- 上級者:1.0前後
- 世界のトップ選手:2.0前後
反則(ファウル)
反則をすると、そのショットは得点にならず交代です。持ち点が減るような罰則は、通常はありません。
| 反則 | 内容 |
|---|---|
| 球触り | 手・衣服・キューなどが球に触れる。試合開始から終了まで、いつでも反則です。 |
| 球違い | 自分の手玉ではない球を撞く。 |
| タップ以外での撞き | 先角やシャフトなど、タップ以外の部分で手玉を撞く。 |
| 的玉を直接撞く | 手玉ではなく的玉をキューで撞く。 |
| 球を手に持つ | 手玉や的玉を誤って手に持つ。 |
| 押し撞き | タップで手玉を押し出すように撞く(プッシュショット)。 |
| 二度撞き | タップが手玉に2回以上触れる。 |
| 場外 | 球が台の外へ飛び出す。 |
| 両足が床から離れる | 撞くとき、少なくとも片足は床につけていなければなりません。 |
| 静止前のショット | 球が完全に止まる前に次を撞く。 |
| 密着クッションへの撞き | 手玉が触れているクッションへ向かって撞く。 |
| 密着球への撞き | 手玉が密着している球へ向かって撞く。 |
| 時間切れ | 持ち時間が決められている試合で、規定の時間を超える。この場合は初球の配置に戻し、相手が再開します。 |
失格になる行為
得点する意志がなく、相手の得点を妨げる目的で撞くこと(いわゆるセーフティ)は、スリークッションでは認められていません。故意の反則とあわせて、その試合の失格負けになります。狙えない配置でも、あくまで得点を狙って撞くのがこの種目の作法です。
球が飛び出したとき・密着したときの置き直し
球が台の外に出たときや、手玉が的玉に密着したときは、該当する球だけをスポットに戻して続けます。3個すべてを並べ直すわけではありません。戻す位置は次のとおりです(記号は最初の図に対応しています)。
| 戻す球 | 置く位置 |
|---|---|
| 赤 | A(奥のスポット) |
| 相手の手玉 | B(中央のスポット) |
| 自分の手玉 | C(手前のスポット) |
置くべき位置に別の球が止まっている場合は、その球のスポットへ振り替えます。たとえば自分の手玉をCに戻したいのに赤がCにあるなら、自分の手玉はAに置きます。
手玉が的玉に密着したときは、置き直すか、そのまま撞くかを選べます。そのまま撞く場合は、密着している球から離れる方向へ撞かなければなりません。また、球がレールの上に乗っても、台の上に戻ってくれば有効です。周りの状況から撞くこと自体が不可能だと双方と審判が認めた場合は、3個とも置き直します。
大会で加わる決まりごと
普段の遊びでは気にしなくてよい規定も、大会では加わります。代表的なものを挙げておきます。
持ち時間
国際大会では1ショットあたりの持ち時間が決められています。UMBのワールドカップでは40秒で、30秒の時点で警告が出ます。時計は球が止まってから動き始めます。各選手にタイムアウトが2回あり、使うとその1ショットは80秒まで延びます。使い切ったあとに超過すると、そのショットは反則として扱われます。
試合形式
点数は大会によって異なります。UMBのワールドカップでは、予選が30〜40点の同数イニング制、決勝トーナメントが50点で同数イニングなし、という形が使われています。国内大会の点数やハンデは、それぞれの大会規定で定められます。
審判
審判は得点や勝敗を宣告するほか、手玉が他の球やクッションに密着していることを確認して知らせます。判定への抗議は、そのショットの直後に行うのが決まりです。
よくある質問
中台と大台、どちらで始めればいいですか?
近くの球場にある台で構いません。中台のほうが距離が短く球も集まりやすいので、当たりを覚えやすいです。システムの数え方は、どちらの台でも同じ考え方が使えます。
クッションは3面に当てないといけませんか?
いいえ。必要なのは回数だけです。同じクッションでも、いったん離れて当たり直せば2回、3回と数えます。
ポケット台でも練習できますか?
穴に落ちてしまううえ、球の大きさもクッションの返り方も違うので、球筋の練習にはなりません。キャロム台のある球場を探すのが近道です。
どのくらいで入るようになりますか?
最初は10回撞いて1点入れば十分です。狙いの立て方を覚えると、外れた球も「なぜ外れたか」が分かるようになり、そこから伸びていきます。
審判なしで遊ぶときの判定は?
競技規定では、判断が難しいときは撞いた側に不利に裁定するのが原則です。数えきれなかったクッションは「入っていない」としておくと、お互いに気持ちよく遊べます。
用語集
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 手玉(主球) | 自分が撞く球。白または黄。 |
| 先玉(第1的球) | 手玉を撞いたあと、最初に当てる球。2個の的玉のどちらを先にしてもかまいません。 |
| 的玉 | 手玉を当てる対象の球。自分の手玉以外の2個。2番目に当てる球(第2的球)だけを指すこともあります。 |
| キャロム | 手玉が2個の的玉に当たること。得点そのものを指す言葉としても使います。 |
| イニング | 順番が回ってきてから交代するまでの一区切り。 |
| ハイラン(HR) | 1イニング内での連続得点。 |
| アベレージ(AV) | 得点をイニング数で割った数値。 |
| グランドアベレージ(GA) | 大会全体の総得点を総イニング数で割った数値。 |
| バンキング | 先攻・後攻を決めるための撞き合い。 |
| ブレイクショット(初球) | 試合の1球目。赤に直接当てる必要があります。 |
| 空クッション | 的玉に当てる前に、先にクッションへ入れる球筋。 |
| ダイヤ | 台の枠に並んだ印。狙いの目安に使います。 |
| システム | ダイヤの数値を使って狙いを計算する方法。 |
| ひねり | 手玉の左右を撞いて回転を与えること。サイドとも呼びます。 |
| キス | 球どうしが意図せず当たり、球筋が変わってしまうこと。 |
| 密着(タッチ) | 球どうし、または球とクッションが接している状態。 |
| 立て直し | 飛び出した球や密着した球を、決められたスポットに戻すこと。 |
| ハネ | 手が届かない配置で使う補助器具。メカニカルブリッジ。 |
| 大台・中台 | 2845×1422mmの台と、2540×1270mmの台。 |
| ラシャ | 台に張られた布。状態によって球足が変わります。 |
| セーフティ | 得点を狙わない守りのショット。スリークッションでは禁止されています。 |
このページが参照したルール
ここに書いた内容は、次の規則をもとにまとめています。細かい規定は団体や大会によって差があるので、試合に出るときはその大会の規定を確認してください。球場での普段のゲームでは、店やメンバーの取り決め(ハウスルール)が優先されます。
- 公益社団法人 日本ビリヤード協会「NBAキャロムビリヤード競技規定」改定版(2026年1月1日施行)
- 世界ビリヤード連盟(UMB)の国際競技規則、およびワールドカップ競技規定
- 米国ビリヤード協会(USBA)スリークッション競技規則
最終確認日:2026年8月26日
次に読む
ルールが分かったら、狙いの立て方に進んでみてください。台の上で実際に試せるツールも用意しています。